里黒小説・「With You」・第一話w

「With You」第一話・「恋の微熱」
―その日は、いつもと変わらない朝だった。
俺、黒川五郎は、いつものように目覚ましを止めて、起き上がった。
しかし、なぜか体がフラフラして、まっすぐ歩けない。
次の瞬間、俺の目の前は真っ暗になった。
「あぁ・・・っ・・・さと・・・み・・・っ。・・・たす・・・け・・・。」
俺は、意識が遠のいていく中で、思わず里見の名前を呼んだ。
しかし、俺のそんな願いが届くわけもなく、俺はそのまま気を失い、その場に倒れこんだ。
俺が倒れてからしばらくして、いつものように里見がやって来た。そう、俺達は毎朝一緒に大学まで行っていたのだ。
里見はいつものようにチャイムを三回鳴らした。
「サ・ト・ミ」のサインであった。
しかし、おかしい。
いつもなら、すぐに寝ぼけまなこをこすりながら、パジャマ姿の黒川が出てくるはずなのに・・・?里見は首をかしげた。
「おかしいなぁ・・・。黒川、何かあったのかなぁ?あ、そうだ!あれがあったんだった・・・!」
と言いながら、里見は黒川の家の合鍵を取り出した。
そう、黒川にもらっていたのだ。
「ガチャ。」
合鍵を使うと、すぐに鍵は開いた。
家の中は、静まり返っていた。
「お~いっ、黒川~っ。どうしたんだ~?迎えに来たよ!」
返事がない。里見はいけないと思いながらも、黒川の寝室へ入っていった。すると、何と黒川が倒れていた!
里見はすぐに駆け寄り、黒川を抱き起こした。
「おいっ、黒川っ!どうしたんだよ!?おいっ!」
すると、里見の呼びかけが聞こえたのか、黒川は意識を取り戻した。
「さとみ・・・か・・・?だいがく・・・いかないと・・・。」
黒川は弱々しい声でそう言った。里見は、おもむろに黒川の前髪をかき上げ、額を触った。
「―っ!すごい熱じゃないか!寝てないとダメだろ!」
里見は、優しいまなざしで黒川にそう言った。
「・・・ありがとう・・・さと・・・み・・・。でも・・・君は・・・大学へ行かないと・・・っ。遅れる・・・ぞ?」
「―黒川っ!大学なんてっ・・・!どうだっていいんだ!君のほうが大事だよ!安心しろ!今日は、僕が君にずっとついてるから。」
黒川の目から、涙があふれた。
「―黒川・・・?」
「ありがとう・・・里見・・・っ。ずっと、さみしかったんだ。おふくろと離れて一人暮らしで・・・っ。」
里見は、そんな黒川を見て、たまらなく黒川が可愛くて、愛しかった。里見は、思わず黒川を抱きしめ、口づけしようとした。
―しかし、黒川はそれを制した。
「―どうしたんだ?黒川。」
「里見・・・。そんなこと・・・したらダメだっ。君に・・・風邪が・・・伝染っちゃうよっ。」
「黒川・・・。俺はそんなことは構わないっ。ただ・・・君を愛してる。君の風邪が伝染るなら・・・それでも構わないよっ。」
そして、里見は黒川に、いつも以上に優しく、そして暖かいキスをした。
朝日が優しく二人を包んでいた―。
☆つづく☆


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